2020-10-01から1ヶ月間の記事一覧

ストイックな残照

地面の傷口から流れる血を塞ぐようにして紅葉がはりついているあんなに燃える山のむこうへ鳥たちは帰ります優しい予感を引き連れてひらひら楽しげに散る桜とは違って紅葉は峻烈に命を際で燃やしつくしている長い凍結の日々を乗り越えようと自然におかれたも…

帰り道

手押し信号のとこまで来たらうちはあと少し『触れて下さい』って表示されるから触れれば『お待ちください』と文字が変わる触れて欲しがっておいてやっぱり待ってちょうだいとかなかなかな信号だな青になっても突っ込んでくるトラックにひきころされないよう…

夜の銀杏

日が暮れるのがこんなに早いから夜の銀杏と呑んできた夏の日差しを遮って優しい木陰をくれた君をすりぬけて今は冷たい風が葉を散らしているからぐるぐるまわる酔いをさますのに並木通りを歩いてみようブーツのかかとはいい音たてる小気味良いリズムは許容で…

ぼくは産まれるまえからぼくだったの

ぼくは産まれる前からすでにぼくでうまれたとき とうとうぼくだったけど経験や発見を通してぼくはより いまのぼくになった喜びは空を高くし悲しみは心を深くしたありふれたぼくの名前をぼくは誇っているんだよ優しさはぼくの夢を育て ぼくのつばさを強くした…

きみと半分こ

夜をはんぶんこしようかきれいに均等に切れなかったら大きい方をもらっときます折れた心の添え木のようにここにいますグラスの中で揺れる液体が血の中で泳ぎます何を言うべきか何を言わずにいられるのかいつも失敗する唇におかわりをそそぎます優しさと厳し…

100年後に

100年を経た後に何が残っているだろう古き良き言葉のいくつかは遺失物の扱いを受けているだろう偽物の星が空を浮遊しているだろうさらなるダメージをうけつつもリカバリーをつなぎたしてひとはやはり生き方を模索しているだろうかひとはそれで守らねばならぬ…

友と別れたあとで

池の周りの紅葉ももう終わりの頃合いあたたかみよりは凄みを見せて燃えるような赤が炎のように降りおちるから長い長い黙祷を捧げる人のようにそこから立ち去ることをしない水面にしなだれかかる枝をかいくぐって呑気に二羽のカモが泳いでくるがあがあ水かき…

10月24日 文鳥の日

鍵を無くしちゃった箱があって中身がなんだったかも忘れちゃってとりあえずとっておいたんだってだからぼくくちばしでピッキングしてがちゃりと開けてあげたんだ何がはいっているんだろうどきどきしながら蓋をあけるとそこにはただただ「だいすき」があふれ…

ぶんちょの日イブ

雛だったときぼくはパッキン思い切りひろげてうちゅうをごくりとひとのみしようと赤いおくちをあけていたののみこんだうちゅうがぼくのおなかの中ではじけてもうひとつのうちゅうを生み出すそんな楽しい夢をみていたら大きなオカメインコにつぶされた重いよ…

夜のブランコ

きいきいと楽しくナナカマドの横でこどもたちの笑い声を青空に届けていたブランコは夜酔客を気遣いながら揺らしてきこきことさみしく軋んだ順番を待つものもない夜のブランコはまさしく大人の乗り物だあなた吐いたりしませんかねだいじょぶですかねブランコ…

空のケージもいつか愛でいっぱいになりますように

どの季節にもどの時間にもどの瞬間にも美しさは顕在していてぼくはふとそれを全部みておかねばならないと思ったあたかも今見ておかねばいけないものででもあるかのように貪欲にもう今日のぼくはあすのぼくとは違うから今日道を彩どって明日には炉に投げ込ま…

雪虫さんこんにちは

トドマツのあたりは注意深く歩いてねふうわりふうわりもう雪虫たちが舞っているものだからまつ毛の上にもし着地したら優しい瞬きで逃してやってね肩のあたりにとまっていたら息をそっとふきかけてねそうだなお祝いのローソクを吹き消す呼気の半分でもいいく…

君にだけ教えてあげるね

君の心にある沢山の扉の一つを孤独がおずおずとノックするとき躊躇なく「どうぞお入りくださいな」と言えるだけの潔さと好奇心をもしも君が持つのならぼくは君にだけそっと教えてあげたいページがある「星の王子様」の44ページを開いてみてどのページもその…

気軽な矛盾

かなしみのその一秒後に嬉しいと言ってもいい嬉しいことが悲しいこともあるきっと相反する両端をどれだけ深く味わえるかでどうにもならないことはどうにでもなってゆくんだろう矛盾をかかえてつじつまがあわないあれこれも懇切丁寧に証明を連ねるよりはるか…

M

「昼間からへべれけに酔いたい気分なの」っていいよいつだって付き合うよ実際昼間のお酒っていいものだよ昼の光は公明正大すぎて時に物事の輪郭がくっきりしすぎる昼の光ってねかえって影を濃く出してしまうものだからお互いお酒には弱かったのにね重苦しく…

ぼく歌う

ある時ぼくは雨を聴いていて ぼくも雨の一部であると知ったある時ぼくは風を聴いていて ぼくも風の一部だと知ったある時ぼくは空を見上げて ぼくも空の一部だと知ったぼくが歌っていたものはそれらの一部分だった一部分でありながら全体であったぼくは 雨で…

懐かしくも愚かしい甘さ

紅葉はいっきにすすんで通りは色彩が騒がしい落ち葉はかさかさかさかさひとつところに集まったり吹き散らされたり集合や解散を繰り返す運動会の練習のようだ空いたブランコで戯れて可愛い足跡を消してしまおうか豊穣を付き従えて秋は誇らし気に往くがいいで…

焼酎は芋派です

不可思議なこといっぱい謎は謎のままでもいいねすっきりはっきりただひとつの正解に辿り着くのは小気味が良いが山ほどの不正解を集めてゆくのもどこか愉快だよたぶんかみさまと同じいるんだかいないんだか或いは居留守なのかだからこそくるおしく希求するか…

最高気温が20度をこえることはもうなさそう

銀杏の葉が緑のまま落ちるのはなんだかもったいないよ濡れた地面にはりついて誰もかれも踏み散らかして色を新しくしたとしても火星が接近しているのを見ないのももったいないよ次は13年後だって自分の年齢に13足してうわぁなんて軽く驚いてる場合じゃないよ…

からっぽ

お腹の中がからっぽー残念ながら頭の中もからっぽです気づけば冷蔵庫の中もからっぽです心の中はからっぽですか いいえそこは満たされすぎて容量いっぱいになってしまってるだけ魂のあった場所はからですか いいえそこは今は不在ですがmorning flightを楽し…

言葉は溺れるがままにまかせてもいい

あまりにもしんと静かに鏡のように空を映し出していたものだからその言葉は着地する場所を間違えて音もなく溺れてゆきました控えめな波紋がとぎれることなくうまれつづけてその言葉の効力が生き絶える際を見つめ続けずにはいられませんでしたあまりに素晴ら…

まあそんな夜もあるよ

落ちる瞬間の夢をみて酷い動悸と乱れた呼吸で目を覚ます誰かが座り直したかのようにみしりと椅子がきしむ辛い辛い本を読んだ半ば力づくでねじふせるようにして読み終えてやったキッチンのほうで何かぐしゃりと崩れる音がする蛇口のぽたぽた音よりはまし呼吸…

ぼくのオレンジ毛布

ぼくの大好きオレンジ毛布もっとふわふわで可愛いやつもあるけどぼくこれじゃなきゃいやだようかいぬしといっしょにもぐっているとオレンジの朝焼けの中から産まれ出ずる前のひとつの命になったような楽しい気持ちぼくらもともとはひとつのもので同じ名前の…

言葉に御用心

深い意味などなく容易に放つ言葉にご用心ください大した価値もなかろうとうっかり捨て去るものの中に宝をみいだす目利きのように言葉の瞬きを恐るべき動体視力で捉えるものはいるのです言葉はいつだって生きている死んだようにみせかけて息を吹き返すなんて…

飾り時計

先代ぶんちょのぴっちゃんはよく秒針と戦っていたお気に入りの3時の位置からずり落ちるのに苛立って赤い秒針をとうとう曲げてしまったんだよ12時についていたキリンの耳も引きちぎってしまった気に入らないものは自分の気にいるように破壊してしまうような独…

チャイはシナモン多めがすき

朝焼けに染まる街建物の東正面すべて一斉に濃いピンク色ジャイプールの風の宮殿を思わせるからスパイス多めでチャイを煎れる牛は神聖な生き物らしいけど道を塞ぐ骨のういた牛達をインド人は案外べしべし叩くなますてーおはようございます バイクには5人くら…

秋は長く優しくあってほしい

靴がだいなしでもかまわない雨がはいりこんで鞄の中の本が濡れてもまあゆるしておくよでもどうかちいさな翼たちが休む枝のあたりでは手加減願います冬を歓迎できない気持ちにそえば秋にひょいと足をかけて転ばせてやりたいくらいだのろのろと手当てするふり…

纏うもの

おさかなは鱗をまとってなんの制約もなく国境をこえる鳥は翼をまとってなんの逡巡もなく渡りをはじめる人は虚勢をまとってなんのはじらいもなく限度をこえる 虚飾をまとって理性をもこえるでもみんなさいごははだかになってこの世の境界線を軽々とこえてゆく…

ぼくが生きてるということ

ぼくが生きてるということを 何によって証しようそれは歌だろうか 踊りだろうか 広げた翼だろうか ぼくの瞳のかがやき そこにうつる空 同じ日はひとつとしてないぼくが愛されてるということを 何によって証しようそれは手の温かさですか まなざしの温かさで…

最後尾でくすくす

寒暖差が激しいと体調を崩すように喜びと悲しみの高低差に人の心はしばしばやられてしまうからその振れ幅の中間あたりの小さな幸せでいいですよ大きな幸福を求める人々の列に馴染まないよかったら先へどうぞぼくら急いでないんでどうぞどうぞなんとなくのん…