2020-09-01から1ヶ月間の記事一覧

凍ったちょうちょの夢

色鮮やかな蝶たちが眼前で一瞬にして凍結した羽の結露のひとつひとつは小さなダイヤモンドになってどの角度からの光りもあますことなくはねかえしていた冷気はゆらり風に踊る絹糸のようにたちのぼる触れただけでぱらぱらと薄氷の羽は砕け落ちてしまうだろう…

歌っています

ぼく歌っていたの横目でちらりかいぬしを気にしながらねぶんちょにはねいちばんかっこよく見える角度というものがあるんだよぼくのかげ夕暮れに長くのびて巨大な鳥になったみたい大きなくちばしで歌えばもっと遠くまで響くかなぼくはここですよきみはどこで…

風邪をひいてはいけません

めんどくさいこのままでいいやとボトルのままで飲み干してしまってうっかりしていた底に沈殿していた哀惜まで呑み込んでしまった内側から焼けつく痛みのような酔いが街の灯りを揺らすから夜よりも更に黒く塗りつぶして沈黙のように固く閉ざしてしまえもうこ…

ところどころいつだって

ところどころいつだって 冬だった悪戯のように戒めのように冬だった人があたたかいことを知るためにも再生する能力を信じるためにも必要なのは冬だった試されるとき暴かれるときそれもやはり冬の仕業だ愚かさが露呈するのも醜さが天の網に掬い取られるのもま…

田舎の葬儀の思い出

田舎の葬儀は思いの外かんぺき潮風が雲雀の歌をさらって上空へと舞いあげるあれはそうかひとつの魂を先導しているのかねおばあちゃんの唇にあいこおばちゃんが真っ赤なルージュを塗った おばちゃんそんな色持ってたの縮んだおばあちゃんのそこだけ艶やかにて…

句読点

ぼく句読点をくちばしでつまみあげてそこらじゅうてきとうにぶん投げているのシードかなって思ってつついたら句読点だったものだからすこし頭きちゃったんだいらないよこんなものだから詩なんかぼく好きだよね何やらすっきりよりすぐった言葉たち「。」で終…

リス🐿

螺旋階段のようにぐるぐると樹の幹を駆け下りてエゾリスがきたよ松の実の奪い合い体の小さなシマリスは気が強い頬袋の中の木の実をカスタネットのようなかたかた鳴らして荒ぶる小さなタイガーは弾むようにかけてゆく君たちは森の番人今日も植林にはげむけど…

ノアの箱舟

水平線をゆっくり船がゆく白いタンクはねガスを運んでいるんだよシベリアに向かうんだ遠い遠い北の方だよオオワシたちがいるところ雲が追いかけて走ってる象のようなキリンのようななんだか足の速いやつもいるノアの箱舟と勘違いしているなもくもくと空の上…

蜘蛛の巣

繊細なレースを編み上げて仕事を終えた職人が誇らしく自らの作品を見分するように蜘蛛が中央に鎮座している雨あがりビーズのようにちりばめたひとつひとつに青空が映り込んで光に酔ってはしまいませんか8個も目を持つきみだからきらきらきらきら×8で輝きに目…

ぼくたちの会話

おかえりかいぬし ただいまぴっちゃんお留守番がんばったよ 遅くなってごめんね今日ぼく二回水浴びした お水なくなってるね今日ぼくほよよボールでスパーリングした うん場所がずれてる今日の雲は早かったぁ 風が強かったからねコスモスは元気だった? みん…

敏感なこころ

敏感なこころは時に多くの悲しみをすくいとってしまうそれでもいつだって真正面から対峙したい問いかけられるあれこれに都度こたえつづけたいそしてできれば先頭をいきたい誰かを風除けにするのはいやだよ感覚を鋭敏にとぎすましてみんなが見ないものを見よ…

深くなる

不確かな予感めいたものを時間をかけて認識しながら空の青さと在り方とを好きな解釈で選び取れる自由さの中でぼくらは日々ほんのわずかに深くなる待つことももどかしく駆け出したい衝動を抑えながらほんのわずかに深くなる

たずねてくるのは虫ばかり

今夜のBGMはノラジョーンズですsmokeyな歌声に合うワインを取り出して固いコルクと戦った今夜の招かれざるゲストはカメムシさんですさすがに素手では無理でして勇しく洗濯ネットを振り回せど捕獲にいたらず申し訳ないが気絶して頂くより他になく御免!とうち…

ことばあそび

「独白」と「毒吐く」が同じ音であるわけだから呪詛の言葉は誰もいない空間に捨てましょう「虚しい」と「虚ろ」は同じ字を使うわけだから愉快な視点で虚をつきましょう逆さに吊るされた愚者のように世界をあべこべにみてみれば条件付きの幸せなんて瞬間から…

松ヤニの匂いは嫌いじゃない

ここから見える松の木の名前をぼくは知ってるよ天までとどけのトドマツさん眺めがええぞのエゾマツさんなぜだかそこだけ音がなくそこだけ温度が低いんだ周りの木々は季節ごとに芽吹き色づき葉を落とし刻々と変化してゆくけれど酷暑の中でも極寒の中でも常緑…

冬よこい

冬に向けて疾走する秋はその助走なんだ冬はいつだって起点であり終点であるきづいているよあの銀杏の気持ちあそこのななかまどもミズナラもトドマツも葉脈の中にじくじくと朝の冷気はしのびこむ命は凛と冴えてゆく準備を怠ったものと正解を踏み外したものが…

雨上がり

雨上がりの小径をゆけば木もくさばなも雨の重みにこうべをたれて空を統べる秋を恭しく跪拝してる針葉樹の葉の先にまあるい雨粒は突き刺さってその一粒一粒には宇宙が宿っていたあの枝のひとつでぶんちょダンスを踊ってみたいぱらぱらと宇宙を撒き散らしてみ…

風とアオサギ

のろのろ家路の途中上空には倍速の風おそるべきスピードでアオサギを運んでいったあっちは原生林コロニーに向かうんだね羽の角度の微調整彼は楽々と過ぎ行き瞬く間に見えなくなったくちばしで空を切り裂くのはどんな感じだろそのとき風はどんな音がするんだ…

ほっちゃれ

川の上流ぼろぼろに崩れて打ち上げられた鮭の死骸をみたことがあるかい「ほっちゃれ」って言うんだよ遠い海を旅してアザラシの襲撃から逃れ漁師の定置網を避け釣り人たちの針をかいくぐり猛禽類の視線をかわしヒグマの一撃をすりぬけ飲まず食わずで岩や川床…

ぼく3歳になる

ぼく今日3歳になったんだけど誕生日設定がよくわからないの卵が産み落とされた日なのかなそれとも殻を突き破ったぼくが最初の呼吸をした日なのかななんにも覚えてないや恐竜みたいなぼくの目に最初に映った世界がどんなだったかもぼくの一生はこの部屋で終わ…

青いお空

空はだれにとってもおなじ青さではないということ悲しみを煮詰めたような青でもあれば待ち受け画面のような気軽さで明るく広がり続けてる青もあるあそこにいくつ願い事が溶けているのかなあそこにいくつ悲しみが吸い込まれていっただろうぼくの空は青い今日…

今日こそ夏の最終日

ぼくお気に入りの場所からかいぬしめがけて飛んで行ったイメージはふぁさっと舞い降りるシマフクロウでもぼくの羽からはぶぶぶぶぶぶとすごい音が出たかっこよく肩にとまろうとしたのに着地の時「ぷっ」って声もでた不本意ながらかいぬし笑うからぼくはずか…

人類ではじめてぶんちょ飼ったひとの気持ち

時間は早くて遅い 遅くて早い耐えるには長く愛おしむには短いぶんちょとにんげんって不思議だよたくさんの中からお互いを見出してありったけの愛を双方引き出しあいながら引き当てた運命にじゅんじている人類ではじめてぶんちょを飼った人はやはり泣いたにち…

日曜のこと

公園のあずまやでおじいさんが2人ビール片手に将棋をうっているひとりはちょっぴり苦い顔その横の砂場でこどもがぐるぐるぐるぐるコンパスのように足を使っていくつもの丸を描いていたハマナスの実が真っ赤だよとんぼのおなかも真っ赤だよ道をあけてください…

雷どーん

雷が騒いでるね 遠くの方でどーんどーん夏へのお別れに空砲撃ってご挨拶してるんだよさようならさようならまた来年ここへ来てねどーんどーん響け遠くまで湿った空気をふるわせて薄くあけた窓からしのびこみひとつの季節が終わりゆくことをしらしめつつ空に亀…

viva la vida

風が繰り返し言わんとしてることはおぼろげにわかるけれど久しぶりのcold play音量をややあげて彼の歌でかき消しちゃおう風はやがてあきらめてカーテンとたわむれはじめるからぼくは手の中もぐりこんで適当に相槌うっておくかつては栄光を誇った王様も聖ペテ…

おしり

地下鉄がさむいよう換気しすぎだようノースリーブなんてもう着れないようはくしょん!くしゃみしたら視線が怖いよう帰り道かいぬしフォルダいっぱいのぼくの写真を見てたますくの中でにやにや変態めおしりばっかりじゃないか早くうちに帰って本物のぼくに鼻…

若い写真家さんの個展をみてみた

ふらりと立ち寄った全体青を基調とした都会の風景に少し苛立ちをブレンドさせたような写真があたたかみよりはどこかストイックな拒絶感を漂わせて並んでいた都市再開発が置いてゆくものマイノリティが上げる声髭をたくわえた作者近影とヒグマ達そんな個展じ…

甘えんぼぶんちょ炸裂

かいぬしがこの手の形を作るとぼく自分から飛び込んでいくのもぞもぞ潜り込んでああ いいあんばいだよかいぬしもうちょっと親指のとこすきま狭くしてそこにくちばしを差し込むのも楽しいのえいっ えいっあたたかいでしょぼくのくちばしかいぬしまだ動かない…

小さなおきゃくさま

おやすみカバーの中でじっと夜の気配に耳をすましてた秒針の音かちこち炊飯器がぽふぽふがんばっておかゆを炊いてる窓の外では風がざわざわ南の方で荒らぶる仲間の噂話ふいにぽたりと天井からてんとう虫が降ってきた柔らかい羽をくしゃくしゃと硬い甲に仕舞…