トドマツのあたりは
注意深く歩いてね
ふうわりふうわり
もう雪虫たちが舞っているものだから
まつ毛の上にもし着地したら
優しい瞬きで逃してやってね
肩のあたりにとまっていたら
息をそっとふきかけてね
そうだな
お祝いのローソクを吹き消す呼気の
半分でもいいくらい
繊細な結晶が溶け消えてゆくように
人間の体温だけで
かれらは死んでしまうから
ああもう雪虫がとぶようになりましたね
ああもうそんなに季節は
急いで冬になろうとしてるんですね
北の人々は
挨拶がわりに雪虫を報告し合う
どこか嬉しげに襟元をかきあわせて
紅葉の加速が容赦なく
なんだかいろいろ間に合わなかった
でもいいか
やあやあ
また君に会えたね
ふうわりと真っ白なきみは
ぼくのほっぺと良く似ているね