言葉は溺れるがままにまかせてもいい

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あまりにもしんと静かに

鏡のように空を映し出していたものだから

その言葉は

着地する場所を間違えて

音もなく溺れてゆきました

控えめな波紋が

とぎれることなく

うまれつづけて

その言葉の効力が

生き絶える際を

見つめ続けずにはいられませんでした


あまりに素晴らしい演奏のあと

その張り詰めた感動を打ち破る

安易な拍手が冒涜であるかの如くに


溺れゆく言葉をすくいあげる手は

どこにもありませんでした

それ自体が放つ意味よりも

言葉の力尽きた後の余白に

もう何ひとつ書き足す必要のない

完璧さが横たわっていたものですから

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