映画 パリタクシー

おはようかいぬし

今朝はかいぬし寝坊したから

ぼくケージに体当たりして起こしてあげた

そのあとちょっとお皿をかみかみした

(ぴっちゃんはカミカミのとき

真面目な顔になるのでおもしろい)

 

    ピリカです

だめです

ぼくねるんですから

はやくカバーかけてください

隊長のおつとめを明日も元気にこなすために

しっかりぼくはねるんだよ

 

(ピリカちゃんはラベンダー色の

おやすみカバーを見ると、すとんとホヨヨに乗る

はい、寝る準備完了ですって顔して

ホヨヨから見上げてくる

それがあんまりかわいくて

時々昼間でもおやすみカバーみせちゃう)

 

良い映画でした

音楽も良かったし、パリの街並みも良かった

修復中のノートルダムがうつったり

凱旋門エッフェル塔

 

わたしがパールのものを身につけると

冠婚葬祭くさくなっちゃうけど

この老婦人がつけているパールが

とてもよく馴染んでいて素敵だった

たぶんいっそ

一本残らず白髪のおばあさんになってしまえば

パールと髪の愛称がよくなるのかも

 

エンドロールの美しいジャズソングを

背もたれに深く身をあずけながら

聴いていた

映画の中にはいつも

ひとびとの生き死にがつまっていて

それぞれが、それぞれにいじらしい

 

となりのとなりの席の人は静かに泣いていて

斜めうしろの人も鼻をかんでいて

 

みんなそうなんだよね

忘れられないキスと

思い出さないようにしているキスがあるのかも

 

そしてみんなあらためて思い知らされるんだよね

そのどちらをも胸にかかえたまま

私たちみんなひとしく

いきているんだってこと

しぬまでは。