さちこさんの器で中国茶

かいぬし出ていい?

  いいですよ

  というかさっきから猛烈に出せ出せしてたの

  だあれ?

かいぬし そのティッシュの山どうしたの

  黄砂がひどくてはなみずとまらないの

 

   ピリカです

ぼくのかいぬしいじめる黄砂だめです

せいばいしてやる

そのまえにうおおお

ぼくつばさかゆくてかゆくて

お胸もかゆくてかゆくて

だめだこりゃあ

 

これはさちこさんの器

大切にしまいこんであったけど 

ふとおもいたって

出してきて中国茶をいれたらとてもいい

きっとさちこさんも

使った方が喜んでくださる

 

お茶をのみながら

さちこさんのお庭の芙蓉はどうなったか

気になった

もうそのおうちには家族の

笑い声がかえってこないと知ってか

あの年のお庭の芙蓉は

いちばん見事に咲いたそうだ

次にそこで暮らす人たちは

お庭の芙蓉、

大切にしているだろうか

あの丘からみた夕陽に

心打たれたりしているだろうか

 

暗がりの姿の見えない動物に怯えながら

夜空に向かって逆立ちした

怖いからこそ

ちょっと多めに私たちは笑ったんだよね

夜空に足を浸して笑ったんだよね

笑い声

うちゅうに向かって飛んでいって

楽しさとか優しさとか乗せて

季節が終わることを恐れず

さちこさんだってだれだって 

やがていなくなることをしっていても恐れず

ただあんまり田舎の夜が濃すぎることだけを

恐れて

でも止まることなく笑い声は

うちゅうの奥へ奥へとつきすすみ

それを受け取ってくれるだれかに

出会えないまま進み続けるボイジャーのように

こうしている今も進み続けてるね