たまごの内側では
長い長い歴史映画が上映されてたの
あんまり長くてうんざりして
ぼくはてきとうぐるぐる
早送りしてた
早送りされた画面は
混ざり合って濃紺にとけあってひろがって
章と章のつなぎ目だけが
きらりきらりと瞬いていた
だんだん卵はせまくなって
だんだんどんどんうるさくなっていった
誰かがぼくを呼んでいて
おいでおいでと呼んでいて
ぼくはくちばしでコツコツ信号を送ってた
今いきますよもうすぐですよ
でもぼくを呼ぶ君はだれですか
ぼくはどこに行けばいいですか
ぼくは筒だった
入り口であって出口だった
循環であって摂理だった
増してゆく力でコツコツ
応えていたら
ぼくのたまごはみしりと割れた
なだれこむ光と空気と音の中で
あんなにもうるさかった呼び声は
ぼく自身の心臓の音だったんだって
ああそうかそうだったのかって
ぼくはとっても可笑しくなって
ぴやぴやと笑った
それがぼくの第一声だよ
おにいちゃん
聞いてた?
ん?