色鮮やかな蝶たちが
眼前で一瞬にして凍結した
羽の結露のひとつひとつは
小さなダイヤモンドになって
どの角度からの光りも
あますことなくはねかえしていた
冷気はゆらり
風に踊る絹糸のように
たちのぼる
触れただけでぱらぱらと
薄氷の羽は
砕け落ちてしまうだろうから
手を伸ばしてはいけないのだ
呼吸すらあたらぬように
息を詰めて
昇っていく凍った蝶の
哀切と憧憬に気づいてはいけないのだ
血が通う者の側からは
触れられぬ隔たりを
超えてはならないから
超えることはかなわないから
生きているとはそういうこと