小豆に赦しをこう

豆苗の森で出会ったふたり

   みたいな写真

今日もおやつタイムたのしたのし

外は雪ですけど

おやつタイムたのしたのし

よくかみかみしてたべるよ

おいしおいし

 

まずは豆にご挨拶をするところから始めます

食べる時に

いただきますって言うんじゃ遅いのです

鍋にかけて煮る前からもう

よろしくお願いしますと

礼を失することなく

真摯な態度で向き合わねばなりません

 

火加減もなかなか大切です

 

外は刃物の投げ交わしがやむことがありません

だれがだれに向かって投げているのか

おそらく投げてる本人すらもわかってません

運が悪ければ刺さります

引き抜いた刃物を怒りと共に

きた方向へと投げ返すのか

黙って静かに止血して

次の誰かを傷つけぬよう処分するのか

 

私たちはそれぞれに自由に答えを出し

それらどれもが正解であったり

それらどれもが不正解であったりする

 

最大の火力で

短期決戦にもちこもうと

鍋の中を地獄にしてしまうのは間違いです

ぐらぐら沸き立つ鍋の中を

狂ったように踊る小豆

生きるが故の苦悩や

煮詰まった仄暗い欲望を

共に煮てしまうのは

小豆に対して大変失礼です

祈りをぶつける激しさではなく

祈り終わった後の静寂を保つように

心は澄んだかなしみがあるくらいでいいのです

 

大きすぎる問いにこたえられないまま

わたし達は

厳冬を越えられぬハナバチでした

夏に愛されたなら

夏のうちに愛し返さねば間に合わないのに

一生がこれほど短いとなぜ

もっと真剣に知ろうとしなかったのでしょうね

 

水を含んでつぼみのように

ふくれあがる小豆たち

花が咲くように

硬い殻を押し破って

ふわりと甘い土の恵み

あらわれたまえ

 

砂糖をいれます

塩をいれるときは小豆達みな

一瞬生真面目な顔つきになる

 

あんこをつくる一連の行程は

必ず最後にわたしをハッピーエンドにしてくれる

 

まだほかほかのあんこをゆっくり口にふくみ

優しく甘さや

くすぐったいような粉っぽさを

香ばしいお茶とともにいただきます

 

おいしいのです

今日は会心の出来ですから

世界のかたすみにどうか

ほんのすこし居場所をわけてください

生きるよろこびを

ゆるしつづけてください

祈るようにしてたべるのです

おいしいのです

 

いいえきっと

食べることは祈りです