ゴッホの絵の中に

ふこふこのおちりが

手のひらにあたる感触を

かいぬしは最大限たのしんでいる

 

いいよ

ぼくも手の中に住んでしまおうと

思っているから

              ぷぷぷ

 

    ピリカです

む!

だめです かいぬし

おちりを撮ってはだめです

ぼくあわてて体の向きをかえます

 

ぼくのかっこいいお胸のゆきんこを

存分に撮ったらいいよ!

            ぷぷぷ

 

銀杏並木

風ではらはらとたくさん葉が降ってくる

金色の祝福を受けているような気分で

通りを歩く

もしもここにゴッホがいたら

きっと赤い赤い紅葉を

キャンバスが燃え広がるように

ぬらぬらと描きあげたにちがいない

 

彼はとても描くスピードが速かった

あとからあとから

塗り直し、塗り重ねるということはせず

おそるべき集中力でいっきに完成させた

(この幾重にも塗り重ねをしていないので

絵の具の“層”が生じず

ゴッホの絵はひび割れなどの劣化が

少ないと言われている)

 

あまりに集中してすごいスピードで描くから

絵の中にバッタの足が入り込んでいたりする

 

今日ここでゴッホ

秋の風景を描いたなら

絵の具の中から無数の雪虫

発見されることだろう

ヤチダモの樹からヤチダモの樹へ

ただそれだけの短い飛行ののちに

あっけなくしんでゆく雪虫

「絵の中」という

それもまたひとつの永遠にからめとられるのは

なんとも美しいことだと思う