今年のリラは早くてこわい

ぽろぽろ しっぽが抜け始めたよ

 

夕陽であぶりながら

しっぽかぞえてみたら

わあ ずいぶんへってる

金色とだいだい色まぜた夕陽

充電するみたいにあびておく

ぼくのくちばし

夕陽で透けていい色になってる

 

     ピリカです

彫りの深いあいつと

シナモンさんにぼくの

隊長ポージングを披露しているところ

よくみるように!

こうして

こうして

こう!

ぼくのすてきなももひき丸出し ぷぷ

(なりゆきさんにらもらった

 ヒートテックももひきはころもがえなので

 冬物にしまってあるよ)

 

ライラックが開き始めた

今年は桜も例年より早く咲いて

早く散っていったから

ライラックもまた早い

 

フランス語で『リラ』

この時期の寒気をリラ冷えと私達はよぶ

美しい言葉だ

たぷん、少し寒いくらいの時期に

咲いてこその花なのだとおもう

 

ライラック祭りは芳しく陽気だけれど

ほんとはたくらみをもった花だ

 

蜂たちとゆらりゆらり

清涼な北国の風に揺れている

優雅な顔した昼とはちがい

気温のさがらぬ風のない夜には

へんになまぬるい月の影で

かくしきれないたくらみを

かくそうともせずに

はからずも

濃厚な甘みが強まってしまって

油断したほろ酔いの帰り道

芳醇さもまた

人をつまづかせる理由のひとつだと

妙に納得させてくれる花だ

 

でもそれはリラの意図したことでない

 

いつだってすきこのんで

人のほうから勝手につまづき

季節にまどわされる

すべてをあたしのせいにして

この夜はなまぬるく

深みをましてゆく

     と、リラはいう