桜からライラックへリレーのバトンという感じ

おかえりかいぬし

ぼく寝てる間に一日が経ったね

だいぶ抜け毛(羽)がおさまってきたよ

明日も元気に歌わなきゃ


おかえりかいぬし

まぶしまぶし

カバーはやくかけてよ

明日遊んであげるから

かいぬしもミルクチーのんて

早くねたらいいよ


ライラックの通りで

自転車ごと花に突進してる人がいた

なんだあのひとは

近づいたらさとみさんだった

「いっこいっこ匂いがちがうのかなって思ったの」

っていたずらがばれた子どもみたいに笑ってた


「いっこいっこちがいます

 あの3つ目の色の薄いやつが

 案外濃い匂いなのです」

って宝の在りかをうちあけるこどもみたいに

おしえてあげた


その会話を聞いていたみしらぬご婦人が

「このライラックはどこまでも続くの?」

と遊びに入れて欲しいこどもみたいに聞いてきた


さとみさんとご婦人は

ちょっぴりマスクをずらして

蜂のように花から花へ移動してる


お向かいの病棟の窓にも香りは届いて

誰かの初夏を優しく揺らしてるだろうか


花から花へ移動する蜂のように

甘い言葉から言葉へ

私も移動を続けて

ねっとり甘たるい蜜を

つくりあげることができたらいいのに

叫び続けて痛む喉に

優しく流し込んで

花のことばで

寝言を言いたい

ぶんちょうはうるさいよって

文句をいうだろうか