遺された絵

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恋人の葬儀は

ちょっとした個展会場だったそうです

花でいっぱいの祭壇の脇は

絵の具を重厚に塗り重ねた

キャンバスがそこかしこ並べられていました

どの絵にも思い出と

恋人の呼吸が塗り込められていたのに

2人を最後までゆるしてくれなかったご両親が

絵をすべて持ち去ってしまいました

一枚だけ

この絵だけをわたしにください

どうしてもこれだけは残してくださいと

お願いした一枚をのぞいては


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話は変わりますが

こちらは神田日勝の絶筆となった[馬」


32歳の若さで

過労死だったそうです


この馬は草をたべませんし

うんこもしません

空白につなぎとめられて

どこへも行けず嘶くこともありません


でもこの絵にじっと目を凝らせば

つややかに盛り上がった臀部や

力強く大地を踏む脚がみえてくるはずです

尻尾はやや剛毛で長くぴしゃりとうちつけてる

黒く巻いた体毛のおおう下腹部は

呼吸のたびにあがりさがりして

蹄は大地をけずってます

まだおぼろげにしか描かれていなかった瞳にも

いよいよ光がやどります

作品を遺した画家と見るものの心が

つながり合う瞬間がこの絵を完成させるのです


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話をもどします


お願いして残してもらった絵は

描きかけの未完成の絵でした

その絵をイーゼルに立てかけて

あの日と同じコーヒーの香りで

お部屋をみたすと

恋人が絵筆を取り出す音

テレピン油の蓋を置く音

画布を走るナイフの音が聞こえてきます

互いの魂に手をのばせば触れられるほどに

2人の心は合わさって

いっしょに絵を描きあげます

何度でも何度でも

現実には完成されることなく何度でも


それゆえに

未完の絵というのは

ひとつの鍵なのだと思うのです





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これは本日のおやつ

ちゃんと鳥さんの絵がついてる

ピリカちゃんだー


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ぼくも食べるー!


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ピリカ大口選手権とかあったら

いいとこ行けると思うな


ぼくはぺたんこ選手権があったら

いいとこ行けると思う


           ぷぷぷ