木の描きかた

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ちょっと前にネット上で

美術の時間に先生が勝手に絵に手を加えて

自分の世界を冒涜されたようでやる気を失ったって記事が載っていた


真逆の経験をかいてみよう


小2の絵の時間のことだ

校庭の木の絵がうまくかけなかった

関節が不自由に折れ曲がった

木造ロボットのようなへんてこな木だった

その内側でいのちがくすぶって

伸ばしたい手足を無理にせまい場所で

屈曲させてるような木だった

先生が来て、絵筆を優しく取り上げて

枝はね、こうやって描くんだよと

すっすっすっと走らせた線は

たちまちに元の不細工な枝をかき消して

天に向かって美しく

曲線と直線をおりまぜながら

画用紙いっぱい伸びていった

魔法のようでとてもうれしかった

あとはあまり水に溶かずに白い絵の具を

のせてごらん そっとのせてごらん

わあ せんせい

わたしの木に雪がつもりました

降ったばかりの真っ白な雪がつもりました

わたしの絵の具はふるいけど

新しい雪がつもりました



その学校には2ヶ月しかいなかったから

せんせいの顔も名前もおぼえてない

その時の絵も捨てられたんだと思う

でもいまでもせんせいの大きな手が

わたしの肩越しからのびて

目の前に美しい枝を出現させたときの

喜びと驚きは

あの土地のツンと鼻腔にしみる寒さとともに

いつだって取り出して

再生可能な素敵な思い出だ


せんせい雪がつもります

のびやかにのばして

わたしの腕にも雪がつもります




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ふうん、

それからかいぬしはお絵描きが好きになったんだね


そうなの

実はこのせんせいに詩のかきかたもならったんだよ

その話はまた後日



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ぼくはかいぬしに

いっしょにいるよろこびを

おしえてあげたよ

            たのしたのし