こどものころ
どうして枕からこんな音がするのか
きいてみるとおばあちゃんは
それは
夜の実がつぶれて軋む音だとこたえた
好奇心にかられて
包丁で枕をぶすりと突き刺すと
黒く小さな夜が
ばらばらとこぼれ出てきた
おとなになって
音の正体は
耳の血管を走る
血の流れだと気づいた
怒りを再沸騰させるようにして
轟轟と流れる血の音だった
どのあたりを切り拓けば
体の中に夜の実を
探すことができるのだろうか
(どうしても中身が見たくて
蕎麦の実の枕を破壊して
おばあちゃんにたいへん怒られた思い出です。
紫のオーナメントはぼくらの小さなお友達から
借りてきました。
ぼくんちの窓から見える夜の灯りを
この中に詰めて返すよ
耳にあてたらどんな音がするか
想像してみてね)
ぼくらは赤い実をおやつにもらいました
わくわく
ピリカ食べなよ
いやいや年上のおにいちゃんからどぞどぞ
いやいやちびっこのピリカからどぞどぞ
つまりぼく達
警戒心の食欲のはざまで
ゆずりあってうろうろしてたの
ぷぷぷ