スズメ蜂が飛んできて
寒いのでどうしても胸元に入れてくれと言う
大変気の毒ではあったけれども
刺されたら痛いしあぶないし
どうしようかと考えあぐねているうちに
「失礼しますね」と彼はもう
入り込んでふこふこと温まっている
あれこの感じ
ふわふわあたたかなこの感じ
これスズメ蜂ぶんちょって
新種のぶんちょだったかなと
そおっとじっとその呼吸を見守っていたら
天井からぶうんといつかのてんとう虫が
「あの時はお世話になりました」
と降りてきた
よくお元気でこの冬を乗り越えましたねと
話していたら指の上の彼は
「ぼくのほんとの姿をお見せします」と
見たことのない虫に変身した
鮮やかすぎるコバルトブルーの上を
金のオーロラがめらめらと走っていた
あれなんてうつくしうつくしと良く見れば
背中から胸へと貫通する穴がある
誰が君にこんな酷いことをしたの?
と尋ねると
“永遠”を採取するものの手によって
刺し溜められたそうで
痛かったろうに可哀想に
それでそのピンは時間を差し止めることは
できたのだろうかどうだろうか
穴のあいた胸で君はなぜ
静かに笑っていられるのか
通り抜けてゆく風で心は冷え冷えとしないのか
聞こうとしたら
スズメ蜂ぶんちょが答えのかわりに
胸を背中までぶすりと刺した
なんとなく納得できて
猛烈な痛みが甘さに変わってゆく過程を
コマ送りでみてみた
久しぶりの同時放鳥
無言で豆苗を食べた
ぼくのしっぽがぼろぼろなのは
ピリカにかみかみされたからじゃないよ
新しいのがぐんぐんのびてるところなの
ぷぴ