孤独な羊

今日は黒いスプーンです

ぼくがんばってみようとおもう

よいしょ

がんばるぞう

せ、せまいけど

いちおうはいれたよ

          ぷぷぷ

 

    

      ピリカです

おにいちゃんのスプーンへの情熱は

あんまりよくわかりません

 

あ、何かがうつっているぞ

 

うつってるやつに言ってやったんだ

なんだいおまえ

かっこいいな!ってね

           ぷぷぷ

 

 

 

 

 

眠れない夜は羊を数えるというけど

ここ最近は

スコットランドの崖の下の

ひとりぼっちの羊のことを

ずっと思っていた

2年もそこでひとりで生きてきて

シーカヤックの人々を鳴きながら追いかけてきて

とうとう岩場に阻まれて

それ以上追いかけられないとわかると

うちひしがれたように

立ち尽くし

戻っていったという

 

差し迫って命の危険があるわけでなく

餌となる草も豊富にあることから

救助の方向へは動かないと知って

ひとりぼっちの羊がどうなってしまうのか

とても気になっていたのだ

 

最初からひとりで生まれ育ってきたものではなく

もともと群れにいたものが

はぐれて独りで生きるって

どんなにそれは心細いことだろう

 

草を食べるのもひとり

げっぷをするのもひとり

激しい雨風をしのぐ場所から

よく星空が見える場所まで

特別かおりの良い草が生える場所も

太陽に最もよくおはようが言える場所も

すべてひとり

おしえてあげたいだれかがいてもひとり

季節がかわってもひとり

海鳴りの中に

だれかの声を聞いたような気のせいがしても

ひとり

そんなひとりの羊がめえめえと

鳴きながらカヤックを追ってきたという姿を

想っては

夜中にぼくたちは

スコットランドは何時だろうとか

どんなお天気だろうとか

考えながら

すこし泣いた

 

そして今日のニュースでびっくりしたよ

羊、救助されたんだって!

わああよかったねー

ぼくは安心して

今日はぐっすり

ねむります

 

 

 

 

羊はフィオナと名付けられたとか

結構体重太めで

健康状態もいいらしい