ベンチに背中丸めて
うつむきかげんで
たばこ吸ってる男の人がいつもいる
髪の毛ながくて
後頭部あたりぺたんこで
ちょっと油分おおめで
ひと束残して耳にかけてあって
洗いすぎたTシャツ着て
ぜったいにこっちはみないで
小さなバケツ足元において
彼の吐いた息が
とぐろをまいて
蠢く一群となって
そこの角からもわもわと
漂ってくるものだから
ぜったいすいこみたくなくて
息を止めて通り抜ける
息止めてるけどでも
こんにちはって言った方がいいかもしれないから
5文字ぶんの呼吸を確保して
くるしげにこんにちはって言うと
変な顔して振り向きますけども
あなたのほうがよっぽど
ひどい顔なさってますよ
たばこ吸ってるのはほんとは見せかけで
ずっともう
燻されたやるせなさを
吐き出し続けているんですよね
ここでいつもこうして
夏の青空をすこし
だめにしながら
心の中で何を焼却してたんでしょうか
ぼくもまた
書いてはぼつにした思いの束に
火を放って
苦い煙を吐き出してしまったかもしれません
ぼく今日も飛んだよ
一度飛べることがわかったら
なんだか自信と
もっと飛んでみてもいいかもしれないって
冒険心が
わいてくるの!
飛んだあとは
ちょと開口呼吸しちゃうけどとてもたのしいよ
ピリカ
びびびびびびって飛んで
ぼくのケージの上に着陸した
初めてピリカに見下ろされて
ぼく無言でうねうねした
ぷぷ