ぼくは換気扇育ちの雀です
少し油くさい巣から巣立った雀です
ただの雀で名前はつけられてない
捨てても捨てても戻ってくる蜘蛛は
別にそんなに不思議じゃない
こっそり帰りの道筋に
糸で印をつけていただけのこと
ニンゲンの目には見えないのだな
とどまらぬ欲に絡みとられて
ひたひたとせまる終わりも見えなければ
どれほどの巡り合わせや愛なんかが
年月を束ねてくれているのかも
ニンゲンの目には見えないのだな
そしていつだって都合よく
見たいものだけを見たいように
見ているんだろうな
躊躇なくぼくは蜘蛛を食べる
貴重なタンパク源だからね
ぼくの明日の飛翔が力強くぼくを生かすために食べる
蜘蛛には名前があったようだが
生きてるものも
死んでゆくものも
みんなもとは同じ名前だから
知ろうとも思わずに引きちぎって食べたよ
蜘蛛からはわずかに夕陽の味がして
金色の糸がふわり
命の結び目からほどけて
空に漂っている
こんなのが出てきた
ぼくそれこわい!