くもじろうのお話

f:id:bunchosparrow:20210224182912j:plain

お祭りで綿菓子をくるくる掬い取るように

怒ってる蜘蛛ごと巣を木の枝で巻き取って

遠くの草むらまで捨てに行ってた

捨てても捨てても何度でも

翌日には同じ場所に巣を作り上げていた


どうやって帰ってくるんだろう

君よほどここが気に入ってるんだな

確かにここは夕焼けがいちばん良く見える


粛々と丹念に巣を紡ぐ『くもじろう』の仕事ぶりは

見ていて美しいものだった

縦糸を張り

往復して補強し

巻き取られたものを巻き返すように

ぐるぐるまわる

お尻から出てくる糸は

うううううんと踏ん張ってるのかい

涙のように勝手に出ちゃうものなのかい

生きることへの執着なんかがねばねばと

生きなければならない重みなんかがねとねとと

お尻から出てくるね くもじろう


名前を授けた翌日にくもじろうは

いなくなってしまった


よほど名前が気に入らなかったか

ほんとは女子だったから憤慨したか

わからないけれど

“個”になることで可能性なんかを

捕らえてみようと考えたのかもしれない

或いは

落ちてゆく夕陽を受け止める

網を張ってやろうと

もっともっと大きな網を張ってやろうと

意気揚々と旅立っていったのだろう



f:id:bunchosparrow:20210224185453j:plain

こちらは今日の青空と雲

f:id:bunchosparrow:20210224185838j:plain

こちらはおやつタイムのぼくたち