リップクリーム塗ったくちびるに
セーターの繊維かなんか
はりつくあのうっとおしさと苛立ち
容易に取り除けないしつこさで
悲しさなんてものが
ねとねとと
わざわざ敏感な場所をねらって
ついてまわるねとねとと
そんな時には
悲しみを悲しむ誠実さも
悲しみが悲しい鮮度も
落ちてきた頃合いで
蹴り飛ばしてしまいます
この悲しみはよく飛ぶでごじゃる
蹴鞠を楽しむ古の貴族が
おほほおほほと笑いながら
遊んでいるから
窓の外では大粒の雪が
くすくすくすくす
肩を組み小声で笑って降ってくる
ピリカの雛換羽がどんどん進む
幼さをぬぎすてようとするかのように
抜けてゆく薄茶色の羽
きみはどんなぶんちょになってゆくのだろう
でもゆっくりとゆっくりと
ぼくについておいでね