食べてくださいオジロワシさん

ぼくは夢をみてるところ

青空をとぶワシの夢だよ

風に乗るとか

滑空するってどんな感じだろうか

それはきっと風の言語

ぼくら鳥類だけがわかることばに

耳をすますということだとぼくは思う

 

     ピリカです

おっ これはオジロワシさんだね

かいぬしおやつからっぽですけど!

ぼくおなかへったから

おずろわす定食たべにいきたいなぁ

 

猛禽類医学研究所の動画をみて泣いた

 

事故で嘴を失ったオジロワシ

人工の義嘴を装着してごはんを食べる動画

時々お皿の外に小魚を落として

でもそれをうまいこと嘴ですくいあげて

もぐもぐもぐもぐもぐもぐ

ごっくん

またお皿からすくいあげてもぐもぐ

ただそれだけの動画なんだけど

見てたらどうにも泣けた

 

この広い世界のどこかで

オジロワシ一羽

事故で死のうと助かろうと

人々の生活には影響がないわけで

なんならオジロワシオオワシの区別も

知らない人だって

いるわけで

冬になるとあれなんかでかい鳥

飛んでるよねきれいだよね

青い空にあんなにしっぽが白くひかって

太陽反射してるみたいで

まぶしいよねすごい白いねきれいだねとしか

思ってない人もたくさんいるわけだけど

そんな鳥のために一生を捧げる先生や

改良に改良を重ねて

最高の義嘴を製作した人々がいて

この美しく気高い鳥に

もう一度食べる喜びを

生きる喜びを

この大きな翼にもう一度青空をと

情熱を傾けた人々がいて

 

いっぽうでやまほど人の愚痴をきき

いいじゃないかもう

そんなことはさ、どうでもいいじゃないか

各々自分を高めるために

粛々と努力だけしていれば

誰かを批判したり悪くなんか言わなくたって

自ずと目指すところに辿り着けるだろうに

でも小さな諍いをすら

治められない無力さとか

うんうんそうだねそれはつらいよねなどと

共感しかできない無能さとか

そんなあれこれに疲れちゃった私がいて

 

でもオジロワシひたすらもぐもぐ

今この瞬間に必要なすべては

目の前のおさかなを平らげることなのだと

もぐもぐもぐもぐの

オジロワシ見てたらどうにも泣けて

食べて食べて

オジロワシさん

どうぞたんとおあがりくださいと

泣けたんだ

 

動画のタイトルは“しあわせの動画”です