親友の思い出

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春の土手でドーナツ食べて

転がっていったドーナツに笑い転げて

世界には斜面を転がるチーズを追いかけて

脱臼したり骨折して喜ぶ祭りがあるんだと

真似をして

セーラー服を汚した

まあまああれはトンビにあげちゃいましょ

さっきから狙っていたからと

紫外線を心ゆくまで浴びていた春があった


少し醒めた情熱で

大人になる手前のあまたるさと

恐ろしいという言葉が

ほんとの恐ろしさを本領発揮する前の

守られた幼さの中で

他愛もない罪をたくさん犯して

罪がまだ罪というほどには開花していない

青さの中で

何を歌ったんだっけ?

あの空気の漏れたオルガン

いや 歌えるものは全て歌い尽くしたんだ

疑ってかかるべき世界の欺瞞を

思春期特有の率直な小賢しさで

暴いてやろうにも

シスターは懺悔作文ばかり書かせるし

入れ歯のあってないふにゃらけた語尾で

いくら熱心に語られても

いかめしきパウロがダマスコの道にて

雷に打たれるあの劇的なシーンも

おひげまでビリビリしびれる

トムとジェリーにしか

脳内変換できなかったんだよ


春の土手でドーナツ食べて

あれは川だったのか池だったのか

照り返しがオレンジに傾くまで

何を語ったんだろう

全てを語り尽くしたのかもしれない

その年齢のその感性の

その本能の上限を超えるあたりまでの

女の子のひみつのすべて

あたしたちようやっとこの

窮屈な制服脱ぎ捨てられるねと

寂しがりながら喜んで

でも今脱ぎ捨てようとしているものこそは

憧憬と懐古の象徴であることを

わかっていたんだと思う


「永遠」なんてもの

追いかけて斜面を降りていった彼女は

いろんな約束ももっていっちゃったから


あの頃よりこんなにドーナツちっちゃくなって値段も高くなったんだよ!って

春の夜空の彼方に

フリスビーみたいに

ドーナツ飛ばしてあげるよ



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すべての卒業生のみなさん

卒業おめでとうございます


みなさんの春が

良いスタートをきることができますように


大切なだれかや

大切な何かとの出会いが

ありますように