ちょうど島の西側がおじいちゃんのいえ
まどを大きく開け放って
海に沈む夕陽を
まどを大きく開け放って
海に沈む夕陽を
窓から迎え入れていたあの時間
夏はいつもそうしたものだった
夏はいつもそうしたものだった
お醤油の一斗缶も
バヤリースの厚いガラスも
みんなみんなオレンジ色
砂にまじるちいさな貝殻たち
ハマナスの実はいっそう赤くもえ
細かなとげでかろうじて身を守る
蚊取り線香も仏壇の線香も混ざり合って
掌みたいな大きな蛾がぐるぐる踊る
ごはんたべちゃいなさいよと注意されながらも
カモメとカラスのうるさい
浜のむこうから
もうあまりに赤い夕陽に
こころは焼き尽くされて
なにもたべれなくなってしまうのだ
こどもの三大恐怖のすべては
なにもたべれなくなってしまうのだ
こどもの三大恐怖のすべては
田舎にあるものだけど
かいぬしがうまいことおとなに仕上がると
たぶんおじいちゃんも
かいぬしがうまいことおとなに仕上がると
たぶんおじいちゃんも
おばあちゃんも
信じてくれていたんだろう
ちょっぴりそんな思い出ばなし