指揮者は二重跳びをきめる

おかえりかいぬし

今日はおんがくきいてきたんだよね

たのしかったかい

    ピリカです

おんがくならぼくが歌ってあげるのに

豆苗のかげから

ほちょほちょ ちょちょぴ♪

寒空の公園 桜をたのしみながら

コンサートホールへでかけてきました

 

交響楽団としての全国的レベルがどう...

とか

曲のよしあしとかなんとか

まったくわかりません

わかりませんけど

あんな美しい第3楽章聴いて

ぜんそくかしらと思うほど息がつまった

 

映画プリティウーマンで

ジュリアロバーツが

ベルディのオペラ「椿姫」をみて

胸を大きく上下させながら

感動にうちふるえるシーンがある

 

わたしの胸はジュリアロバーツのように

大きくないけど

やっぱりあんなふうに息を大きく吸って吐いて

握り合わせていた

親指の爪が反対の手の甲に

食い込んじゃうくらいに

美しさにただ耐えていた

それはもう、耐え難い楽章だったから

 

ある人たちは

繰り返し自問する

生まれてきた理由を

 

ある人たちは

ちぎれんばかりに手を伸ばして

その意味をつかみとろうとする

 

指揮者はあんなに跳ねる

振っているのは指揮棒じゃなく

なわとびなんじゃないかというくらいに

 

背中から這い上がった生が

頭頂部をこえて

目の前におちてゆく

 

ある人たちは

ぐしゃぐしゃにまるめた人生をなげつける  

もう生きていたくないと

何度でも何度でも投げつける

投げつけるそのたびに

「美」は確実に打ち返してくるから

ひろいあげて

しわのばして

そこに書かれた明日を

読み上げなくちゃならない

 

みんなが打ったり投げたり

にじゅうとびをきめて

大音響でクライマックスをむかえ

どこかのおじさんがぶらぼーって

叫んでるのききながら

 

わたしのいのちはきっと

なんの意味もなく

「おっ、うまれてみよっかな」くらいの

軽いノリで発生したんだなとひらめいた

(そのあとに待ち構えている苦難のことなど

何もしらずに)

「なんか楽しそうだし生まれてみよっかな」

くらいのね

 

 

でもとりあえず今は

生きていることを楽しめているから

それがとても嬉しいから

ばしばし拍手して

すこし泣いた