チェロでラフマニノフ

ぼくとかいぬしは最近

あまたるいチェロにどっぷり浸かっている

ぼく半分とけてる


あまくてあまいチェロなんだけど

この人はわざわざ

滝にうたれながら弾いたり


なんか高い絶壁で弾いたり

裸足で水に浸かりながら弾いたりして



ぼくは少し心配になる

楽器はいたんじゃったりしないのかしら

それより君、溺れたり落ちたりしないのかい

らふまにのふ 協奏曲にばんが

ぼくのお気に入り

             ぷぷぷ



      ピリカです

ぼくのお気に入りは白い風のようなお馬

ソダシさんだよ

たてがみがね

深海にそよぐ白い焔のようだった


ピリカ隊が騎馬出動するときは

ぼくこの方に乗せてもらうってきめてるの

ちょっと乗ってみたよ

              ぷぷぷ



チェロはステファン・ハウザーという

チェロ奏者です


眉間に皺をよせて

狂おしい表情で甘く切ないフレーズを弾いたり

宙空に視線をさまよわせ

何かいいたげにひらいたくちもとをとじて

静かに弓をゆっくりゆっくりひききったり

後ろに無造作になでつけた髪が

額にたれかかるのをきにもとめず

何か音をとおして語ってる


パフォーマンス上手な...という言葉になるのかな

クラシック音楽の下地を持っていないので

演奏を正当に評価できる耳をもっていません


でもきっと

最後の音を甘く優しく長く

静かに消してゆくところ


大切なだれかと別れる時に

そのひとの頬をそっと優しくゆっくりとなでて

さいごにくすり指のはらが

静かにはなしがたくはなれてゆく

あんな感じ


そのくすり指にも頬にも

互いの体温はまだ、瞬間残っているのに

静かにそっと星がきえるように

冷えていくあの感じ

そこにあったものが

たしかに消えてなくなってゆくことを

互いに等しい距離感で

うけいれてゆくあの感じ

切ないおもいだけが

錨のように心に沈んで


それが

かんじられるよねぇ

ぴっちゃん