窓からカメムシが入ってきて
じっとしてればいものを
硬い身体で天井の灯りに
ばんばんと狂ったようにぶつかって
ガラスのカバーはきんきん鳴るし
突如 眼前に落ちてきたりして
まことに迷惑なため
退治するよりほかにない
ほんとうならば窓から逃してやるのが常なのに
心に余裕がなかったのです
わかっていたけれど
あらためて突きつけられると
愕然としてしまう現実ってあるじゃないですか
そしてその現実って
多くの場合
どうにもかえがたくしょっぱくて
泣きたいような笑いたいような
塩からさを喉の奥にとじこめて結局
泣くことも笑うこともできずに
ただ暗くなってゆく部屋の電気を
つけもせず茫然と
昼の熱を残したままの床やら家具やらと共に
夜が体の奥底にまで
浸潤してしまえばあるいは
明日の訪れにも耐えうるのだろうかとかなんとか
そんなこころもちでいたものだから
無慈悲な一撃で
カメムシ叩き落としまして
空をかいてる手足の動きとめるため
慈悲の一撃
完膚なきまでに加えまして
ティッシュにくるんで
流してしまいました
ばんばんぶつかっていた音もやんで
静寂を勝ち取って
たいへんまんぞくです
この部屋に狂ったものは
ふたつはいりませんので
調和のとれた夜があとはねっとりと
空気を攪拌するばかりです
ややっ
何かはいってるね
なんだろ はいってるね
おっ
これはうんこだね
ほんとだ うんこだね
これはきっとぼくだね
ぷぷ
かいぬしの手の中ではがまんしてるんだよ