からだのあちこちがむず痒いので
皮膚をめくってみると
生えてきているのは
羽ではなくて
鱗だった
どうりで陸の上で生きるって
体が重いものですよ
でも海は遠い どうにも遠い
なのに体のすみずみで
血液がうるさい
水をワインに変えたあの奇跡は
体液くまなく海水に
戻してはくれないのか
たいしたことじゃない
多少こぼれおちてしまったところで
人はせいぜいしょっぱい生き物だ
自らの血潮の中で
溺れ翻弄されるもまた
心地よきこと
それでいつか
本当の海に向き合って
心臓と波は語り合うだろう
鱗の生え揃った体をくねらせて
飛び込めばあとはもう
まっすぐ まっすぐ
泳いでいくだけだ
それまでは
耳の血管の中をひたはしる
海の音を聴いて眠ろう
ぐう
おにいちゃん
あまえんぼ将軍だね
くすくす