セミはもういない

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セミはいつも遠慮してたんだよ

どうしよっかな

いちばんはやだな

めだっちゃうもんな

隣のやつが鳴いたら鳴こうかな


そんな逡巡ののち

背中のあたりが

とうとうむずむず耐えられない一匹が

みみみみみみ

鳴き始める


つられて急に周りも

「我も我も」と

鳴き始める

みみみみみみみみ

千回もみみみみ言うから

せみっていうのかな


でもある日を境にみんないなくなってしまった

かさかさ

乾いた風が彼らの体を転がして行った

ステンドグラスのようなその羽を

ありんこ達は厳かに

運んで行ったよ

さようなら