泣いている女の子を見たんだって
女の子といっても
もう成人した女性だったそうだけど
個性きつめの雑貨屋の店主が
何事が喚いていたものだから
万引きでもあったのだろうかと
小鳥の絵皿なぞ眺めながら
やりとりを聞いていたんだ
断片しかきいてないけどね
店主の説教は熱を増し
我は相当なる人格者なり!
って
陶酔と飛沫を撒き散らし始めた
女性の髪の毛は脂でべたべたで
長くのびた爪で涙をはらっていた
「若いんだから風呂入ってちゃんと化粧くらいしなさいよ」
「そんなんだから負のオーラにやられるのよ」
「そんなんだから幸せは逃げちゃうのよ」
とか
とか
正しいんだろうけど
正しいのか?
風呂に入って化粧できない数多の理由の
たったひとつをも想像できない
暴力的な正義の押し付けが
素敵な雑貨達を
ゴミコーナーみたいにしちゃったから
かいぬしは黙って
豆苗売り場へ退避した
強風で吹き飛ばしても
お日様がてらしても
まあ
どちらも涙を乾かしてくれるには
ちがいないだろうけどね