ほら
耳って海岸にたくさん落ちてるでしょ
あれって一個ずつそれぞれ
波の音聞き分けているわけなんだけど
厳密にいえば
泡の弾ける一音一音の
微妙な高低差すらも
すべてとりこぼすことなく
聞きとれているんですよ
ちいちゃなくちびるが
ぱちりとわれて
刹那に消えてゆくことば
泡には泡の
みじかい一生の中で
内側にそっと包み込んで
そっと抱き続けてきた
かなしみがあったんだけど
それらいっせいに
光にまきこまれて
ここらいったいはもう
1秒間に最大限
融和可能な限界を超えて
音が溢れてしまって
それを粛々と耳たちは
己の螺旋の中にとりこんでいるのです
海岸うるさいなって
こころかきみだされるときは
それら無数の耳に
我知らず同調しちゃってるときだから
耐えられないようなら
ふたつばかり選んで
お待ちかえりください
うちに帰ったら1人の夜
こっそりと
既存の耳の上におしあてたらいいのです
余計な音はかききえて
ちいちゃくはかなく消えてゆくものの
最後のことばだけ
ぱちりと
きくことができますから
ピリカおいでー
一緒に豆苗たべよう
わあい
たべようたべよう
おにいちゃん...
お顔におべんとつきすぎ!
ぷぷぷ