チェリー

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公園のベンチで男の人が

ギターを弾いていた

開きかけた桜の前で

ところどころつかえながら歌っていた

こどもたちは完全に無視して

枯れ枝で地面に

規則性の無い線を描いている

ぐねぐね大蛇がのたくった跡のようでもあり

波打ち際のようでもあり

これ以上崩しようのない草書体のようでもある

ギターは下手だが

のびやかな歌声は今日の風と相性がよい

通りをぬけて

木立をぬけて

庭作りに励むご婦人の耳元をぬけて

眩しい目で見上げる芝犬のしっぽを揺らして

去年の落とし物を舞い上げて

忘れたくないものは

忘れていくものの最後尾につけとこう

呑気な心地で一緒に歌えば

かたくなな結び目が春の陽気にほどけて

地面の地上絵も

新しい空にむかって

離陸を始めた

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桜の前でその人が歌っていたのは

スピッツの『チェリー』でした

君まったくこの午後にふさわしすぎるじゃないか


f:id:bunchosparrow:20210427195846j:plainかいぬし

ぼく さくらんぼカミカミできるの?


どうだったかな

ぶんちょはさくらんぼ食べていいのかな..


調べておきます