先代ぴっちゃんの天国とは

ぼくワキワキしてるの

インコさんのモノマネです

はげしく水浴びしたので

自慢のおぐしもこんな感じ

乾かさなくっちゃ

 

こうやってね

お水はじきとばすの

 

      ピリカです

とうみょう....

とうみょうめ!

      かみかみかみかみ

くすっ

豆苗やっつけてやったよ

 

これは先代ぴっちゃん(女子)

知っているぶんちょさんの訃報に

かなしくなってしまったので

先代ちゃんのこと考えた

 

先代ちゃんは入院先の病院で亡くなりました

あんなにおうちと私のそばが好きだった子を

知らない場所でひとりで逝かせてしまった

 

酸素室、点滴、強制給餌

良いと思うことはすべて施して

ダメでもせめて呼吸のしやすいところで

最後の時をすごして欲しいと考えたからです

 

早朝鳴った電話

「小鳥のクリニックです」という声色で

あ、だめだったんだなとすぐわかりました

 

きれいな箱にちいさな穂のブーケと

ガーゼのおふとんにくるまれて

かえってきた先代ちゃん

 

ごめんねごめんねって大泣きして

(どこまでも泣くとさいごは歯がいたくなるということをあのとき知った。

正確には歯というか歯ぐきかあれは)

おうちに帰ってこれたねよかったねって

わんわん泣いていたら

箱の中のぴっちゃんが

「あたしもうどこにもいかないから!

 ここにいる!」

と、くっきりはっきり言ったものだから

お骨はずーっとそばに置いてあります

 

みんな、あの子は虹の橋にいきましたとか

青いお空を自由にとんでますとか

お星になりましたとか

言ってそれはそれぞれにたいへんすてき

 

でも頑固に意志の強い先代ぴっちゃんの

彼女の天国はこのおうちです

どこにもいかずこの生活の中に

そこここに彼女は溶け込んでいます

 

ミルクティーのあまあい湯気もぴっちゃん

朝陽でピンク色の東の窓のきらめきも

夕陽当番をする男子ふたりのあくびにも

古びたラグをなでる温風にも

夜風が揺らすカーテンのすその部分にも

ぴっちゃんがとけこんでる

部屋中どこも

そこらじゅうぴっちゃんなのだ

 

うれしそうに見上げてきたおめめの中の

あのきらきらした光はいったいなんなのだろう

命というのはおそらく

あんな一点に凝縮された

せつなくて健気な光なのだ

 

あの光はわたしのまぶたの奥に

すうっと吸収されて

この部屋で眠り、起き、

考え、悩み、くるしみ、よろこび

生きるわたしそのものの中に

ぴっちゃんはとけこんでる

そこらじゅうぴっちゃんになってしまって

わたしもいちぶぶんぴっちゃんなのだ

   とおもってる