カモメ

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そのカモメは明らかに風を楽しんでいた

もう夕暮れ時

他のカモメは

寝床に帰って

明日のフライトに備えて

翼の手入れなどしているのに

彼女だけは

風といつまでも戯れていた


水平線と名付けて

ぼくらが想いを馳せる場所は

実際には存在してない

どこまでもどこまでも

空と海は交わることがないからだ


淡い曖昧さはもう

夜の群青色に塗りつぶされてしまうから

早くおうちへお帰りと

終わってゆく一日の優しい名残りを

風切り羽で小気味よく切り裂いて

彼女は沖へと向かっていった

水平線を目指して風に乗っていった