とても感謝していることを
お伝えしようと思い
お手紙を書き始めたら
感謝のことばは勝手に便箋から
空飛ぶありんこのようにとびだして
思い思いの場所へと
出稼ぎにいってしまった
残された余白は
ため息でうめることはない
羽の模様の美しい便箋だったから
そのままにしておこう
賢き友は
読み取ってくれることだろう
果たせそうにない約束も
やがて薄れることばの効力も
そんなことはきにもとめずに
丁寧なてつきで
静かに文字に目を落として
片目ずつ閉じた
ぶんちょのまぶたを
繊細な眠りを妨げぬように
静かに次の頁を繰ることだろう