水は沈黙のように重く
深く沈んだ体にのしかかってくる
目をつぶって潜行すれば
浮力と推進力のすきまから
にやりと笑いかける何かがいて
息を止めてるのも忘れて
なんだよと返事をしそうになる
時間と意識が消失すれば
いつでもあまりにも無になりすぎて
ああ
人間は所詮は液体なんだな
溶け出してなくなってしまう心地よさ
ターンの数もどうでもいい
明日の疲れもどうでもいい
お財布わすれたけど
晩ご飯なんてどうにでもなる
指からこぼれ落ちる砂の感触のように
全身をそよぐ水に酔いながら
泳ぐ
どこまでも泳ぐ
ちょっぴり塩素の匂いをしのばせて
かいぬしが帰ってきたよ